Mémoire du printemps

 

春になりました。

 

 

この季節の匂いをかぐと、

 

空しいような、悲しいような、

 

なんともいえない感覚になる。

 

 

僕は愛媛県の公立高校を卒業して、

 

美容学生として大阪に出てきたのだけど、

 

事の流れでなぜか、

 

東大阪にある近畿大学の男子寮に住むことになった。

 

「長瀬」という駅から歩いて30分ほどの

 

「ニコニコ・ハイツ」という名の寮。

 

家賃は2万円。

 

風呂は無くて、共同トイレで、

 

6畳一間に流し台が付いているという感じの、

 

どの辺がニコニコなのかよくわからない、

 

とても簡素な部屋だった。

 

 

初めての環境は、

 

明らかに思っていたものとは違っていて、

 

生活のリズムを掴み始めるまでの10日間ぐらい、

 

言いたくないけど、とても淋しかった。

 

その短い時期に感じた空しさみたいな悲しさみたいな、

 

なんともいえない遣る瀬無い感覚が、

 

美容師としての僕の始まり。

 

 

あれからもう23年か24年になるけど、

 

そんなに昔のことに感じないな。

 

あ～春だねぇ。

 

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